第7回ビジョン・ストーリーの5つの特徴

前回帝人のブランドステートメントをテーマにして紹介した虎の門病院の「ビジョン・ストーリー」は、読者に明瞭なイメージを伝えることができたと思う。それは5つの特徴を持っている。

特徴の1つ目は、「具体性」ということである。前回の虎ノ門病院の話の中で、主人公の加藤課長が「本当ですか!」と驚く場面や、家族に雄弁に自社の製品を自慢する場面などを思い出してみよう。読者が感じたように、ビジョン・ストーリーは、その場面のイメージが明瞭に伝わる。そして、あたかもその場に居合わせたような臨場感すら感じることがある。それに対して、ホームページに掲載されているような概念的な説明表現は、読者に具体的なイメージを与えることができない。中期計画等で新しく経営ビジョンを打ち出しても、社内から思ったような反応は得られず、「分かりにくい」とか、「イメージがわきにくい」というように言われることがある。その原因は、実はそれが概念的な説明に終始しているからである。

特徴の2つ目は、「記憶・印象に残る」ということである。前回のストーリーを読んだ読者は、「虎の門病院の話」というタイトルを聞いただけであのストーリーが思い出されるはずである。物語が長期記憶に効果的なことは昔からよく知られている。例えば、みなさんが子供のころ絵本で読み聞かせられた「北風と太陽」や「アリとキリギリス」等のお伽話は、今でも思い出せるだろう。アリとキリギリスであれば、夏、キリギリスがのんきに楽器を演奏している場面や、冬になって、ボロボロの衣装を来てアリに助けを請う場面など、いろいろと浮かんでくる。それに対して、概念的な説明は、記憶に残りにくい。典型的な概念的な説明は、企業理念である。自社の企業理念を暗誦している人の比率は実のところ低い。それは、企業理念や社員の頭が悪いのではなく、概念的な内容に終始した説明方法が悪いのである。この企業理念にストーリー付けをしたなら、きっと記憶に残りやすい企業理念になること間違いなしである。

特徴の3つ目は、「共感性」ということである。虎ノ門病院の話は、私が作った帝人グループの話である。しかしながら、帝人に関係のない一般の人に聞いてもらって、感想を聞くと、「帝人に好感が持てました」という感想を言う人が多い。見ず知らずの他社の話でも好感が持てるのであるから、これが自社についての話であれば、なおさら共感度が高まるのはいうまでもないことである。それに対して、概念的な説明からは共感は生まれにくい。たとえ自社の経営ビジョンであっても、どこかよそよそしく感じられてしまうのは、愛社精神がないからではなく、表現形態が悪いのである。

特徴の4つ目は、「本音を盛り込める」ということである。概念的な説明はきれいな言葉を使うので、なかなか本音を潜り込ませる余地はない。しかし、「ビジョン・ストーリー」の場合は、お話なので、物語の中に「ちらり」と本音を織り交ぜることができる。例えば、ある社員が会社に新規事業の提案をする際、公式には会社に対する提案であるが、実のところは若い頃の夢の実現だったりする。また、彼の提案は、表向きには堅い理由を述べているが、彼の本音では、自分の願望が裏にあるということがままある。みんな公式の文書や仲間との会話では言いにくい本音を、ビジョン・ストーリーの中に忍び込ませたりする。だから、書いたストーリーを見せてください、と頼むと、大の大人が「恥ずかしい」と言ったりする。恥ずかしがるのは、通常他人に隠している本音が書かれているからである。

特徴の5つ目は、「実現意欲が高まる」ということである。ビジョン・ストーリーというのは、通常、企業の社員に書いてもらっている。このため、どのようにして書くかという書き方指導を行う。しかし、こういう話を書いたことのある人は少ないので、みなさん初体験の人が多い。だから最初は苦労して書く。しかし、初体験ながらもこうしたストーリーを書いて見てみて、その発表会をやると、その後、参加者が一様に、「このストーリーを実現したくなった」と応える。それは自分の想いがこもり、かつ将来に対するイメージが明確に湧き、そうなりたいという気持ちが湧きおこってくるからである。それに対して概念的なビジョン表現では、なかなか実現する意欲が湧いてこない。前回帝人のブランドステートメントをテーマにして紹介した虎の門病院の「ビジョン・ストーリー」は、読者に明瞭なイメージを伝えることができたと思う。それは5つの特徴を持っている。

特徴の1つ目は、「具体性」ということである。前回の虎ノ門病院の話の中で、主人公の加藤課長が「本当ですか!」と驚く場面や、家族に雄弁に自社の製品を自慢する場面などを思い出してみよう。読者が感じたように、ビジョン・ストーリーは、その場面のイメージが明瞭に伝わる。そして、あたかもその場に居合わせたような臨場感すら感じることがある。それに対して、ホームページに掲載されているような概念的な説明表現は、読者に具体的なイメージを与えることができない。中期計画等で新しく経営ビジョンを打ち出しても、社内から思ったような反応は得られず、「分かりにくい」とか、「イメージがわきにくい」というように言われることがある。その原因は、実はそれが概念的な説明に終始しているからである。

特徴の2つ目は、「記憶・印象に残る」ということである。前回のストーリーを読んだ読者は、「虎の門病院の話」というタイトルを聞いただけであのストーリーが思い出されるはずである。物語が長期記憶に効果的なことは昔からよく知られている。例えば、みなさんが子供のころ絵本で読み聞かせられた「北風と太陽」や「アリとキリギリス」等のお伽話は、今でも思い出せるだろう。アリとキリギリスであれば、夏、キリギリスがのんきに楽器を演奏している場面や、冬になって、ボロボロの衣装を来てアリに助けを請う場面など、いろいろと浮かんでくる。それに対して、概念的な説明は、記憶に残りにくい。典型的な概念的な説明は、企業理念である。自社の企業理念を暗誦している人の比率は実のところ低い。それは、企業理念や社員の頭が悪いのではなく、概念的な内容に終始した説明方法が悪いのである。この企業理念にストーリー付けをしたなら、きっと記憶に残りやすい企業理念になること間違いなしである。

特徴の3つ目は、「共感性」ということである。虎ノ門病院の話は、私が作った帝人グループの話である。しかしながら、帝人に関係のない一般の人に聞いてもらって、感想を聞くと、「帝人に好感が持てました」という感想を言う人が多い。見ず知らずの他社の話でも好感が持てるのであるから、これが自社についての話であれば、なおさら共感度が高まるのはいうまでもないことである。それに対して、概念的な説明からは共感は生まれにくい。たとえ自社の経営ビジョンであっても、どこかよそよそしく感じられてしまうのは、愛社精神がないからではなく、表現形態が悪いのである。

特徴の4つ目は、「本音を盛り込める」ということである。概念的な説明はきれいな言葉を使うので、なかなか本音を潜り込ませる余地はない。しかし、「ビジョン・ストーリー」の場合は、お話なので、物語の中に「ちらり」と本音を織り交ぜることができる。例えば、ある社員が会社に新規事業の提案をする際、公式には会社に対する提案であるが、実のところは若い頃の夢の実現だったりする。また、彼の提案は、表向きには堅い理由を述べているが、彼の本音では、自分の願望が裏にあるということがままある。みんな公式の文書や仲間との会話では言いにくい本音を、ビジョン・ストーリーの中に忍び込ませたりする。だから、書いたストーリーを見せてください、と頼むと、大の大人が「恥ずかしい」と言ったりする。恥ずかしがるのは、通常他人に隠している本音が書かれているからである。

特徴の5つ目は、「実現意欲が高まる」ということである。ビジョン・ストーリーというのは、通常、企業の社員に書いてもらっている。このため、どのようにして書くかという書き方指導を行う。しかし、こういう話を書いたことのある人は少ないので、みなさん初体験の人が多い。だから最初は苦労して書く。しかし、初体験ながらもこうしたストーリーを書いて見てみて、その発表会をやると、その後、参加者が一様に、「このストーリーを実現したくなった」と応える。それは自分の想いがこもり、かつ将来に対するイメージが明確に湧き、そうなりたいという気持ちが湧きおこってくるからである。それに対して概念的なビジョン表現では、なかなか実現する意欲が湧いてこない。

このコラムは、雑誌「ビズテリア経営企画」に連載した「ストーリーテリングで人を動かす」10回シリーズを再掲しています。

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